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2012-05-12

恋よ恋(10)

 来尾の意図を測りかね、香穂は無言のまま顎を引くことで肯定に代えた。
 「あれ、何なの」
 「あー…」
 若干睨むようにしながら問いかければ、怪魔はちらりと夕姫の方を窺う。すると下界の人の子はとにかくと言って肩を返した。
 「雨が降りそうだし、家に入りましょう?来尾ちゃんも、よかったらお茶して行って」
 「あーうん、サンキュ。このガキんちょともうちょっと喋ったら、すぐ行くよ」
 「あら、ずいぶん香穂ちゃん達が気に入ったのね」
 くすりと笑うのへ、来尾はけっとばかり肩をすくめて見せる。
 「そんなんじゃねーけどサ。とーるに会ったら、こいつら一人占めしよーとすんだろ?」
 「…ああ…」
 夕姫が、妙にのろのろと笑んだ。
 「そうねえ。お兄ちゃんは蕾ちゃまたちが大好きだから、香穂ちゃん英ちゃんに会ったら大喜びよね」
 「…?」
 女の声がわずかに低かった気がして、香穂は思わず夕姫の顔を見上げる。そこには変わらず微笑があったが、何となく顔色が悪いように見えた。
 「夕姫ど」
 「じゃあ、先に行ってお茶の支度でもしておくわね」
 加減でもと問おうとした先、彼女はにっこりと言って我が子の手を取った。何事か促し、二人で家の方へと歩き出す。
 しばしその背を見送り、香穂は怪訝に立ち尽くす。ふと何かが手に触れ、見下ろしてみると英が手を繋いで来ていた。その弟の視線は、ひたすら怪魔に向いている。
 「うーん…」
 一方の来尾は、困った顔で腕を組んで小さく唸った。雨の予兆に冷え始める大気に包まれ、やけに深刻そうな様子に見える。
 「ねえ、ちょっと。私たちと話したいんでしょ?さっさと口開きなさいよ。何が言いたいの?さっきの、怪魔のこと?」
 痺れを切らした香穂がずばり切り込んだ。
 「へあ?あ、うん、まあ」
 「何よ、はっきりしないわねえ。そもそもあれ何なのよ。怪魔だってことしかわかんないけど、よくないものなの?」
 ぽんぽん言うと、来尾が一瞬きょとんとしたあとプスリと笑った。
 「何よ」
 「いや?べっつにー。ただ、オメーラみたいのには、俺らなんかは怪魔だってだけでよくないものなんじゃねーのと思って」
 「母上は、そういう言い方はなさってないわ」
 すらりと出た答えに、怪魔はまた目を瞠ってから笑う。今度は、なにやら嬉しそうな照れくさそうな顔だった。それが、だんだんニヤニヤに変わって行く。
 「ふーん、そっかそっか。御大花将がねえ。アイツ、案外話せるとこあるよな」
 ちょっと懐かしむような目をして、彼は表情を引き締めた。
 「母上のことをアイツとか」
 「んーじゃま、その信頼にオコタエして、ってか」
 香穂の抗議を遮り、さきほど小さな怪魔が消えた地面を指差す。
 「さっきのあいつは、まあ、害があるっちゃあるし、ないっちゃない…時もある」
 「はあ!?どっちよ」
 「んー…何つーかな。自分次第、ってか。
 「まあ人間の感情をエサにする怪魔の一種なんだけどさ。よくあるみてーに負の感情じゃなくて、やたらやわらかい感情を好むってのが変わってんだよな」
 「よくわかんないんだけど」
 「気ィ短いとこ、かーちゃんにそっくりだな。まあ聞けって」
 軽く姉弟の頭を押さえるような仕草をしてから、来尾は少し照れたように早口で言った。
 「あいつはアレだ、人間の恋心って奴を食うんだよ。こう、あったかい、フワフワした感情とか、揺らぎとか、うーん何てんだろな、期待のこもった不安定さっつーか、まあ、わりと悪くない感情?の部分な」
 「…よくわからないんだけど…」
 「あー。お子ちゃまだもんなあ」
 来尾が肩をすくめて首を振る。そう言えばあの怪魔も子供には興味がないなどと言っていたと思い出し、香穂は不得要領ながらもむかっ腹を抑えて考え込む。自分が恋というものを知らないのは確かだ。
 両親ならば、来尾の今言ったことを完全に理解できるのだろうか。
 と思えば、父の手紙を読めなかったことがなおさら残念に思えた。あれを読んでいれば、少しは現況の理解への助けになったのかもしれない。難しそうだからと人を頼らず、自分で調べながらでも読んでみるべきだったか…
 母に知られれば反省の色が見られないとゲンコツの一つも貰いそうなことを考えつつ、幼仙はふと別のことを思い出して俯けていた顔を上げた。
 「夕姫どのが、あれを見えてなかったみたいなのも、その、あれの能力の影響なの?」
 「ああ」
 来尾がすこし笑った。
 「そりゃーな。下界じゃ言うだろ、『恋は盲目』ってさ。色々見えなくなるモンなんだよ」
 「はあ?」
 怪魔はひどく人めいている。香穂はますます混乱する思いで弟に視線を向けてみたが、返って来たのは話さえ聞いていたのかどうか怪しい笑顔だった。
 「げかいはおもしろいんだね、かぐほ」
 はいはい、と溜め息をつく他にできることがない。見上げた空にぞわぞわと動く黒雲が目に映って一瞬眉を顰めるが、何がしかの感想を持つ前に来尾の声が思考を遮った。
 「まーとにかく。あいつに憑かれてるとなると、夕姫はちっと厄介かもしんねーぞってハナシだよ」
 「そう、なの?具体的にどんな風に?」
 「気持ちを食われちまうわけだから、恋の相手への関心が薄くなる。しかも不平不満ばっかが残ってけば、そのうちにはそんな生易しいモンじゃなくなる、かもな。ホントこればっかは本人次第だけどさあ。今の様子じゃ、夕姫は透への気持ちが変わって来てるっぽい…」
 「ほう」
 不意に、低い、けれど艶やかな声が中空に零れた。同時に、ふわりと芳しくもすずしい香気。





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 なんかうまく説明できませんな…ぬう。
 それにしても、だんだん香穂メインくさくなって来てます。おかしいな、こんなはずでは…
 次回は変化があるはず。



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